もののけ姫のタタリ神シーンはなぜ怖い?トラウマの理由と呪いの正体を徹底解剖
村を襲うタタリ神から少女たちを守るため、アシタカはやむを得ず弓を射ち、ナゴの守を討ち倒します。しかしその代償として、タタリ神の蛇状の触手に触れたアシタカの右腕には赤黒い「呪いの痣」が刻まれました。
この呪いは、アシタカにとって極めて過酷な二面性を持っています。
第一の側面は、骨肉を蝕み最終的に宿主の命を奪う「死の刻印」です。痣は時間とともに徐々に広がり、激しい疼きと発熱をもたらします。村の巫女であるヒイ様は、痣が全身に回れば確実に命を落とすと告げ、アシタカは髷を切り落として故郷から永久追放されることとなりました。
第二の側面は、怒りや殺意に共鳴して発現する「人知を超えた超人的膂力」です。タタラ場を襲撃した侍たちの首を一本の矢で刎ね飛ばし、刀身を素手でねじ曲げ、十人がかりで開ける大門を一人で押し開ける――。アシタカの右腕は、タタリ神の怨念が宿るたびに筋肉が異様に隆起し、恐るべき破壊力を解放します。
しかし、アシタカはこの力を決して誇示しません。破壊的な力を振るうたびに痣の色は濃くなり、死期が早まることを理解しているからです。「憎しみに身を委ねれば己もまたタタリ神になる」という葛藤を抱えながら、アシタカは呪われた腕を左手で必死に抑え込み、曇りなき眼で物事を見極めようともがきます。この右腕の呪いこそが、本作の根底にある「暴力の連鎖をいかにして断ち切るか」という命題を体現する装置となっているのです。